少し濁りのある暗めの紫色をしていて、野生のベリー類、ザクロ、ミントや紫蘇などのハーブ類、スパイス系の複雑な香りがあります。
味わいには果実の甘みはほとんど感じない辛口の印象で、トゥルソー特有のじんわりとした出汁のような旨味、際立つ酸、そしてしっかりとしたタンニンも感じられます。
柔らかい印象でありつつも、ドライで長い余韻があります。
ベアーグ・ランチのワインは、長年にわたる研究、海外の著名生産地への訪問、そしてたくさんの重労働の賜物です。
このビオデナミで栽培される畑は、あらゆる面での期待値を上回るブドウを生み出します。
この畑の山岳地の土壌と高い標高は、アルプス原産のこの品種にとって理想的な環境です。
しかし品種がテロワールに合っているということよりもなによりも、この畑の所有者であるケリー・ベアーグ一家の献身的で惜しみない重労働、我慢強さ、そして情熱があったからこそ、望み通りの仕上がりのブドウが出来上がったのです。
Pax は2000 年にスタートしたフレッシュな家族経営のワイナリーです。
オーナーのパックスとパム・マーリー夫妻は、それぞれマスター・ソムリエになることに憧れていました。
毎日必死に勉強をして、同じ志を持つ仲間達との勉強会で二人は出会い、そして恋に落ちます。
パックスはワインとは無関係の家庭に育ち、大学では美術史を専攻しました。
レストランでアルバイトをしながら、自分の将来を考えているうちに、やがて「ワイン」という飲み物の歴史に深い興味を抱くようになります。
ワインの勉強の為に二人で行ったフランス旅行では、ブドウと人と土壌との関係性や、ヨーロッパで深く根付いた「ワイン」という文化に完全に魅了されます。
そして1997 年、二人はカリフォルニアに住まいを移し、ワイン業界で生きていく決心をします。
その後パックスはDean & DeLuca のワインバイヤーに抜擢され、自分が持っているヨーロッパ・ワインの知識をもとに、カリフォルニアワインという別のジャンルの飲み物に刺激を受けます。
その中でもパックスにとって、最も衝撃的だったのが「シラー」であり、カリフォルニアのポイヤックがオークヴィルであり、ポムロールがカーネロスのメルロであるならば、北ローヌに匹敵するカリフォルニアのシラーが存在しないことに気付き始めます。
そして2000 年、運命的な出会いを感じたブドウ畑からシラーを造る目的で、Pax Wine Cellarsをスタートさせます。
これらブドウ畑に共通することは、全てがソノマ・カウンティとメンドシーノの冷涼な環境であり、フルボディ且つ繊細な表現力を持つワインが造れるということです。
ニッチなアングルを攻めたPax ブランドは勢いに乗り、パックスとパムは投資家と共に2006 年にWind Gap ブランドをスタートさせます。
Pax がシラーやローヌ品種に特化したブランドであるならば、Wind Gap はシャルドネやピノ・ノワールはもとより、トゥルソー・グリやヴァルディギエ等の聞き慣れないブドウ品種をリリースする、遊び心がたくさん詰まったhip なブランドでした。
しかし、投資家との意見の不一致を理由に2018 年、Wind Gap ブランドから手を引く決心をし、自身のPax ブランドに専念する決意をします。
現在、Pax では北ローヌを思わせるような質感とフレッシュ感があるシラーを中心に、Wind Gap 時代に扱っていたトゥルソー・グリやヴァルディギエ等の珍品種も造っています。
スタイルは紛れもなく「ニュー・カリフォルニア」で、農薬や自然界に存在しない物は一切畑に入れず、土着酵母にて自然に発酵を行い、亜硫酸塩の添加も最小限に抑えるナチュラルな造りをしています。