この爽やかなワインは、シャンパンとスパークリング・ワインをこよなく愛する醸造家を奮い立たせることになりました。この畑のシャルドネを使ったスパークリングワインを造り、ワイナリー設立20 周年を祝う年になる2021 年にリリースするという素晴らしいアイデアが生まれたのです。またナパ・ヴァレーのシュラムスバーグの元醸造家だったクレイグ・ローマーの協力も得ることができ、こうしてフリーマンにとって初めてのスパークリング・ワインが誕生したのです。ユーキ・エステートは、太平洋からわずか8㎞の標高300m ほどの場所に位置する畑です。この畑に最初に植樹されたのはディジョン・クローンのピノ・ノワールでしたが、2017 年にはそのうち0.2 ヘクタール分のピノ・ノワールにシャルドネを接ぎ木しました。翌年にはユーキ・エステート初となるシャルドネを収穫し、スパークリングワインのようにさわやかなワインが出来ることを確認しました。瓶内二次発酵を行う伝統的製法で、デゴルジュマン時に糖分を加えないブリュット・ナチュールのスタイルで造っています。またフリーマン特有のエレガントなハウス・スタイルとこの特別な畑の特徴を余すことなく表現できるよう、醸造にはミニマルな姿勢をとっています。ユーキのブラン・ド・ブランのたっぷりとした果実味は、この畑の真の特徴です。澱と共に樽で一次発酵させたことにより、ワインのキャラクターがさらに豊かになりました。またフレンチの旧樽を使うことで、ワインにストラクチャーと香りが与えられ、無濾過で仕上げているのでボディが失われることなく自然な透明感が生まれるのです。そして瓶内でさらに発酵させることにより、酵母特有のキャラクターがより一層引き立ちます。フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーはケン・フリーマンと六本木出身で奥様のアキコによって2001年に設立されました。その15年前、まだ二人が出会って間もない頃、共にエレガントで洗練されたシャルドネとピノ・ノワール好きとして意気投合し、いつかはカリフォルニアでブルゴーニュのような複雑味と、飲み手を惹き込む力を持ったワインを自分達の手で造ることを夢見ていました。世界に匹敵するワイナリー設立を実現するために、冷涼でなだらかな斜面に植えられているブドウ畑を中心に、300を超える畑や栽培農家の視察を始めます。その結果、選んだのは霧に覆われ海岸から内陸に吹き込む冷たい海風に影響されるソノマ・ヴァレーの生産地でした。そこで育つブドウはゆっくりと成熟し、フレッシュな酸が保たれ、とてもピュアでフレーヴァー豊かに育ちます。フリーマンが設立された2000年代は、カリフォルニアでは果実味たっぷりのワインが生産され消費されていたブームの真っ只中ですが、彼らはそんなトレンドに影響されることなく、有機農業を基本としながら、バランスが取れた上品なワインを醸造するという自分達の信念を貫いています。結果、フリーマンのワイン・スタイルはカリフォルニアはもとより、世界からも注目を浴びるようになり、各国の著名なレストランのワインリストに採用されて、小さいながらも著名なブランドに成長しました。2015年4月、安倍晋三首相を招いて行われたバラク・オバマ元大統領のホワイトハウス公式晩餐会に、2013年ヴィンテージの涼風シャルドネが供され、一躍脚光を浴びました。2019年現在、アキコさんはカリフォルニアでワイナリーと畑を所有する唯一の日本人オーナー女性醸造家として、つつましく切れ味のある高品質ワインを造り続けています。
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