2015 年のヴィンテージは、エネルギーに溢れています。
最初に感じるのはシナモン、ヴァニラ、タバコ、クミンなどのスパイシーな香り。
そして少し空気に触れさせると、百合やバラの香りがグラスから立ち上り、黒スグリやボイズンベリーの濃い香りが後を追います。
口に含むと、丸みのあるシルクのようなタンニンと緊張感とエネルギーを感じます。
味わいの大部分には新鮮な夏の果実を感じますが、月桂樹や黒オリーブ、そして土っぽいようなスパイス感が複雑味となり、アイズリーのテロワールの特徴でもある口当たりの良い長い余韻へと続きます。
この素晴らしいヴィンテージは、並外れた輝きと香りの複雑さ、そしてアイズリーの証でもある優雅さと精巧さを兼ね添えています。
気温が穏やかでほとんど雨が降らなかった冬のお陰で萌芽は早く、開花も4 月上旬と記録的に早かった2015 年。
どの区画でも実の付きがとてもよく均一で、樹齢の高さとテロワールの安定感を物語っていました。
5 月の気温は低めだったためにナパ・ヴァレー全体では収量が低めになりそうでしたが、早めの開花とバランスの取れたキャノピーのお陰で、アイズリー・ヴィンヤードの樹は安定していました。
夏の気温の高さが均等な成熟を促したため、素晴らしい品質のカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫は2001 年以来の早さで9 月5 日に始まり、9 月15 日に終了しました。
アイズリー・ヴィンヤードのブドウはCCOF 認証のオーガニック且つ、Demeter 認証のビオディナミブドウです。
アイズリー・ヴィンヤードはカリストガの東、ナパ・ヴァレーの北端に近い扇状地に位置し、1971年以来、最も長熟が可能で凝縮したフレーヴァーを持つカベルネ・ソーヴィニョンが栽培されてきました。
北にあるパリゼーズ山脈に守られ、チョーク・ヒル・ギャップを通って来る西からの冷気によって冷却される約15.2haの畑は、水捌けの良い丸石の多い土壌で、収量が少なく凝縮感溢れるブドウが育ちます。
この素晴らしい畑から造られるワインは特異なコンビネーションを持ちます。
ストレートな個性且つ緻密で明確なフレーヴァーを持ちつつ、滑らかな舌触りで重たさを感じさせない凝縮感があり、熟成による複雑味が生まれる要素も持ち併せています。
アイズリー・ヴィンヤードに最初にブドウが植えられたのは1880年代で、当時はジンファンデルとリースリングが植えられていました。
その後も継続的にブドウが植えられ、1964年にはミルト&バーバラ・アイズリー夫妻により最初にカベルネ・ソーヴィニョンが植えられました。
1970年代に驚くべきワインが次々と現れた後、先見の明を持つナパ・ヴァレーのヴィントナー、ジョーセフ・フェルプスがその後伝説的なカベルネ・ソーヴィニョンとなるワインをこの畑から造る事になります。
1975年から、ジョーセフ・フェルプスのアイズリーの最後のヴィンテージとなる1991年まで、他のワインと比較できない程素晴らしい個性と品質を持つワインが、この畑から造られました。
1991年ヴィンテージにはこのアイズリー・ヴィンヤードから2つのワインが造られました。
一つはフェルプス最後のヴィンテージ、そしてもう一つは、この年にアイズリー・ヴィンヤードを購入したアローホ夫妻がリリースしたアローホ・エステートのワインです。
その後、アローホが造るアイズリー・ヴィンヤードのワインはカリフォルニア屈指のカルトワインの地位を確立します。
2000年からアローホ・エステートはバイオダイナミック農業を実践し、2005年にはデメターよりバイオダイナミック農法の認証を獲得しました。
栽培と醸造の両方の分野で、自然のリズムに適応しながらワイン造りを実践してきました。
2013年にはフランス・ボルドー1級のシャトー・ラトゥール、ブルゴーニュのドメーヌ・デュジェニーとモノポール・クロ・ド・タール、コンドリューのシャトー・グリエ等のオーナーとして知られる、フランソワ・ピノーがアローホを買収しました。
シャトー・ラトゥールの総支配人、フレデリック・アンジェラ氏監督のもと、歴史を刻んだアイズリーのブドウを使い、クラシカル且つ新しいスタイルのナパ・ヴァレーのワインを生産しています。
2016、この畑のテロワールと実力を証明すべく、ワイナリーの名前を「アイズリー・ヴィンヤード」に改名しさらなる飛躍を目指します。