このシャルドネには、新鮮な桃、梨、柑橘類、そしてハニカムのよういきいきとした香りがあります。パプリカやバニラのような複雑な味わいを、新鮮なレモン、青りんご、ハチミツ、有核果実、そして微かなラベンダーのような風味が追います。芳醇でしっかりとしたテクスチャーと、ジューシーな酸と素晴らしいミネラル感が相まって、長く満足感のある余韻を感じます。このシャルドネは、サンフランシスコ湾にサン・パブロ湾が流れ込むあたりのナパ南端にある、アメリカン・キャニオンとカーネロスの畑で栽培されています。冷涼な海風と明け方の霧が、いきいきとした自然の酸を保ちながら、ゆっくりと成熟して複雑な風味をもたらします。ガーギッチ・ヒルズの全ての畑は自然栽培で、再生農業の原則に則っています。1977年にワイナリーを設立して以降、ミイエンコ・“マイク”・ガーギッチは「ザ・キング・オブ・シャルドネ」としてカリフォルニアのクラシックなシャルドネのスタイルを確立した醸造家として知られています。MLF発酵を一切しないシャルドネの醸造方法を用いて、生き生きとした美しい酸味が感じられるワインを造ります。1976年、かの有名なパリのティスティングの結果を受けて、ミイェンコ「マイク」・ガーギッチの名が世に知れ渡ります。フランスのトップクラスのワインとカリフォルニアワインのブラインドテイスティングが行われ、白ワインのトップに選ばれたのがカリフォルニア産の「1973年モンテレーナ・シャルドネ」でした。カリフォルニアワインが世界に認められるきっかけとなったこのワインを造ったその男こそが、マイク・ガーギッチでした。
その翌年、マイクはあの「ヒルズ・ブラザーズ・コーヒー」のオースティン・ヒルズとパートナーを組み、ナパ・ヴァレーにガーギッチ・ヒルズ・セラーを設立します。1977年の独立記念日のことでした。もともとヒルズ氏は経営のスペシャリストであり、ナパ・ヴァレーのラザフォードの一等地にいくつもの畑を所有してた為、ワイナリーの資金源としてはもとより、ビジネス面でも細かく指揮を取ることが可能でした。その一方でマイクは根っからの醸造家で、最高品質のワインを造ることだけに専念したのです。息ぴったりの二人が生み出したリッチで複雑なシャルドネは、その後も世界各国の賞を受賞し、ワイン・ラヴァーの心を鷲掴みにする事となります。ガーギッチ・ヒルズのワインは、安定した品質と長期熟成可能なワインとして知られているほか、アメリカのレーガン大統領やクリントン大統領、英国のエリザベス2世女王等の晩餐会で愛飲されました。ただ、ワイナリーが本当に嬉しいと思えることは、どこにでもあるようなごく普通の家庭の食卓にガーギッチ・ヒルズのワインが並び、記念日やお食事をよりいっそう思い出深いものにする瞬間です。
ワイナリーは現在6つのワインを生産しています。どれも個性を生かしつつ、一つ一つ丁寧に感性を込めて醸造されますが、特別な思いを込めて造られるのは、やはりシャルドネです。エレガントな香りと繊細な味わいが絶妙なバランスとなります。その他、このシャルドネの兄弟的存在のフュメ・ブラン、リッチでスパイシーなジンファンデル、深みとコクを感じるカベルネ・ソーヴィニョン、どこかセクシーな印象のメルロ、そしてマイクの愛娘にちなんで名付けられた気品ある甘美な味わいのデザートワイン「ヴィオレッタ」を生産しています。青色のベレー帽がトレードマークのマイクは90歳を過ぎた今でも健在です。2008年には、カリフォルニアのワイン産業に貢献した人物をたたえる「VintnersHallofFame」の殿堂入りを果たします。ガーギッチ・ヒルズは現在、マイクの愛娘Violetと甥のIvoJeramazが舵を取ります。決して過去の栄光に溺れる事がないよう、二人は毎年ワインの品質向上に力を入れています。
ブドウを持続的に生産し続けることはガーギッチ・ヒルズで最も重要な事です。環境にやさしい農業を実践することが、健康的で豊かなブドウ畑を維持ための長期的でしかも現実的な唯一な方法だと信じています。そしてその結果、より品質の高いブドウを生産することが可能となります。ガーギッチ・ヒルズが所有する5つの自社畑では有機栽培を実践し、化学肥料や殺虫剤、除草剤等は一切使用せずに、天然酵母だけを用いてワインを醸造します。マイクの口癖である「畑から皆さんのグラスに直送の自家製ワイン!」という一言を確実に実行し、お食事と合わせやすく、繊細で上品なワインを造ることを心がけています。2003年以降、ガーギッチ・ヒルズのすべてのワインのラベルに「エステート・グロウン」と
記載しています。これは自社畑のブドウ100%からワインを造ったことを証明しています。2006年にはワイナリーが完全に太陽光発電に移行しました。これらを記念して2007年にワイナリー名をガーギッチ・ヒルズ・エステートに改名しました。