2017 年のカベルネ・ソーヴィニヨンは、まるでベルベットの手袋に包まれた鉄拳のようなワインです。2017 年の象徴である非常に小さい果粒は、色の濃い深みのあるスパイシーな果実を核に感じます。凝縮されたスミレの香りと、アイズリー・ヴィンヤード特有の青系果実の香りから始まり、かすかにローストした肉の肉汁の香りもあります。時間がたつにつれ、アメリカンチェリーとタバコの葉の香りも立ち上がります。口当たりはフレッシュかつ精巧で、うまみと素晴らしい凝縮感があります。タンニンは非常にきめ細やかで緻密で、ココナッツパウダーやダージリンティーの香りが後を追い、長い余韻には色の濃い果実の層が広がります。長期熟成のポテンシャルが高いワインです。それまで5 年間続いた、乾燥した冬に終わりを告げた2017 年の冬。しかしその後雨期後半になってから何度か冬の嵐が訪れたため、萌芽は平年並みの時期でした。4 月に入ってからの穏やかな気温と降雨量のお陰で、キャノピーの生育は目を見張るほどでした。春の気温は落ち着いていて、2012 年以来の開花の遅さでした。6 月に最初の熱波に襲われて樹勢は一度穏やかになり、畑全体で果粒は小さめになりました。夏の気温は例年より高めで、8 月上旬にゆっくりと色づき始めました。その後は熱波の頻度も高まり、ブドウの成熟は進んでは止まることを繰り返し、その結果凝縮感とフレッシュさのあるブドウに仕上がりました。収穫されたブドウは精確に選果され、完ぺきな果粒だけが使用されました。全体的に果
粒が小さかったこともあり、収量は2016 年の35% 減となりました。アイズリー・ヴィンヤードのブドウはCCOF 認証のオーガニック且つ、Demeter 認証のビオディナミブドウです。アイズリー・ヴィンヤードはカリストガの東、ナパ・ヴァレーの北端に近い扇状地に位置し、1971年以来、最も長熟が可能で凝縮したフレーヴァーを持つカベルネ・ソーヴィニョンが栽培されてきました。北にあるパリゼーズ山脈に守られ、チョーク・ヒル・ギャップを通って来る西からの冷気によって冷却される約15.2haの畑は、水捌けの良い丸石の多い土壌で、収量が少なく凝縮感溢れるブドウが育ちます。この素晴らしい畑から造られるワインは特異なコンビネーションを持ちます。ストレートな個性且つ緻密で明確なフレーヴァーを持ちつつ、滑らかな舌触りで重たさを感じさせない凝縮感があり、熟成による複雑味が生まれる要素も持ち併せています。アイズリー・ヴィンヤードに最初にブドウが植えられたのは1880年代で、当時はジンファンデルとリースリングが植えられていました。その後も継続的にブドウが植えられ、1964年にはミルト&バーバラ・アイズリー夫妻により最初にカベルネ・ソーヴィニョンが植えられました。1970年代に驚くべきワインが次々と現れた後、先見の明を持つナパ・ヴァレーのヴィントナー、ジョーセフ・フェルプスがその後伝説的なカベルネ・ソーヴィニョンとなるワインをこの畑から造る事になります。1975年から、ジョーセフ・フェルプスのアイズリーの最後のヴィンテージとなる1991年まで、他のワインと比較できない程素晴らしい個性と品質を持つワインが、この畑から造られました。1991年ヴィンテージにはこのアイズリー・ヴィンヤードから2つのワインが造られました。一つはフェルプス最後のヴィンテージ、そしてもう一つは、この年にアイズリー・ヴィンヤードを購入したアローホ夫妻がリリースしたアローホ・エステートのワインです。その後、アローホが造るアイズリー・ヴィンヤードのワインはカリフォルニア屈指のカルトワインの地位を確立します。2000年からアローホ・エステートはバイオダイナミック農業を実践し、2005年にはデメターよりバイオダイナミック農法の認証を獲得しました。栽培と醸造の両方の分野で、自然のリズムに適応しながらワイン造りを実践してきました。2013年にはフランス・ボルドー1級のシャトー・ラトゥール、ブルゴーニュのドメーヌ・デュジェニーとモノポール・クロ・ド・タール、コンドリューのシャトー・グリエ等のオーナーとして知られる、フランソワ・ピノーがアローホを買収しました。シャトー・ラトゥールの総支配人、フレデリック・アンジェラ氏監督のもと、歴史を刻んだアイズリーのブドウを使い、クラシカル且つ新しいスタイルのナパ・ヴァレーのワインを生産しています。2016、この畑のテロワールと実力を証明すべく、ワイナリーの名前を「アイズリー・ヴィンヤード」に改名しさらなる飛躍を目指します。