SoCal vs NorCal 南と北カリフォルニアの違い
こんにちは、南カリフォルニアワイン専門店の SoCalization 代表の白神です!
いつも「南カリフォルニア」という言葉を連呼しているので、時々「カリフォルニアって南北で違うの?」と質問をいただきます。今回の投稿では「南北の違い」についてカルチャー的な観点や、ワインの観点から解明していきたいと思います。
目次:
代表的な都市は?
あなたが 「カリフォルニア」と聞いてイメージする都市は、どこでしょうか?
日本から直行便が飛んでいる大きい空港がある都市でいうと、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴなどが思いつくのではと思います。
ワイン好きの皆さんは、ナパ、ソノマ、サンタバーバラなどでしょうか?!
カリフォルニアあるあるなのですが、元サンディエゴ住民だった私としては、「カリフォルニア」とひとくくりにしないで!という地元愛が出てくるくらい、都市が違えば結構雰囲気が変わります。
30kmくらい車走らせるだけで全然雰囲気の違う場所が見えてくるし、実際、カリフォルニアの最北端から最南端までは1600km以上あり、ほぼ北海道から鹿児島くらいまであります。北海道と鹿児島、全然違いますよね?
というわけで、元サンディエゴ在住7年、北のサンフランシスコまで車で縦断しようとおもったけどやっぱり飛行機にしたことがある私(←)が、各代表都市とそのイメージを図とともに解説します。
サンフランシスコ:
北カリフォルニア "NorCal" の代表的な都市、サンフランシスコ。通称「ベイエリア」にあり、基本的にサンフランシスコ近郊の町出身者たちは都市名を言わず「I’m from the Bay Area」などと言います。ワインが有名なナパはここから1時間ほど車を走らせたところにあり、距離にして70kmほど内陸です。
Facebook, Google, Apple, Uberなどのテック企業が集まる「シリコンバレー」はココ! スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校もこの地域です。そんな高年俸人財が集まるため家賃が高騰、古いワンルームでも30~40万円くらい !
ちゃんと四季があり、「ここはカリフォルニアなのか?!」と疑うほど、冬は息が白くなるくらい寒い場所です!ビーチはあるが、夏でも水温が冷たすぎると言われるし、離岸流のため泳ぐには危険とさえ言われています。
スポーツチームは、MLB サンフランシスコ・ジャイアンツ、NFL の49ers、NBAのウォリアーズなど。
ロサンゼルス:
南カリフォルニア "SoCal" の代表、ロサンゼルス。「ザ・カリフォルニア」日本でイメージされるカリフォルニアはココと言っても過言ではない。ハリウッド、ビバリーヒルズはいわゆる 「Greater Los Angeles・ロサンゼルス大都市圏」 に含まれる。
南カリフォルニアで晴天が多く、映画の撮影がしやすく、映像産業が発達したらしい。しかし、人口はカリフォルニア最多でとにかく渋滞がひどい・・・いつどこからどの方向に向かっても基本的に渋滞。年間で120時間も渋滞につかまっているとの統計も。
カリフォルニアの夏ファッションや、ライフスタイルにおいて流行の発信地。
スポーツチームは、MLBがロサンゼルス・ドジャースとエンジェルス、NFLがラムズとチャージャーズ、NBAがレイカーズとクリッパーズ。ちなみに大谷翔平もいるエンジェルスの本拠地で、ディズニーランドがあることで有名な「アナハイム」はロサンゼルス・カウンティ(郡)ではなく、オレンジ・カウンティ。なので実は正式チーム名 「Los Angeles Angels of Anaheim」(アナハイムのロサンゼルス・エンジェルス)。
サンディエゴ:
カリフォルニア最南端、メキシコとの国境都市。「 The Best Weather on Earth 」(世界最高の気候)で知られるサンディエゴは、別名 “THE FINEST CITY” (最高の都市) とも呼ばれ、カリフォルニアで「引退したら暮らしたい都市 No.1」の人気を誇る。
ロサンゼルスのような大都市ではないが、面積が広く総人口は意外とサンフランシスコよりも多い。気候のためか、住民の性格もおおらか。細かいことは気にせず、人生を楽しんでいる人が多い。快適な夏は全米各地から観光客が来る。冬は2週間しかないが、地元民はここぞとばかりにダウンジャケットやマフラーで着飾る 笑
サーフィンやクラフトビール、メキシカンフードに関しては、南カリフォルニアの中でもリードする聖地的存在。他のカリフォルニア都市でもメキシカン料理は多いが、サンディエゴ民は「好きなメキシカンレストラン」があるのではなく、「好きな肉系タコス屋」、「好きなシーフード系タコス屋」、「好きなブリートー屋」など細分化されるほどのこだわりっぷり。
スポーツチームは、MLBが最近ダルビッシュ有を獲得したことで話題になっているサンディエゴ・パドレス、NFLはロサンゼルスに移転したチャージャーズがあった。
番外編:サクラメント
あまり知られていないが、実はれっきとしたカリフォルニアの州都。北カリフォルニアに位置し、サンフランシスコからは内陸へ140kmくらいの位置。
境界線は?
北カリフォルニアと南カリフォルニア境界線はいったいどこなのでしょうか?結論から言うと公式にはありません。大阪府民的な表現をすると「キタ」と「ミナミ」の境目があいまいなのと似ているかもしれませんが、NorCal も SoCalはあくまで精神的なカテゴリ分けです。
ただ、ロサンゼルス圏以南の住民は間違いなく「SoCal」を名乗るでしょうし、サンフランシスコを始めとしたベイエリア圏の人たちは間違いなく「NorCal」を名乗ります。その間に位置する都市の人たちは「セントラルコースト」と言ったりしますが、それまた公式に境目が決まっているわけではありません。
※この画像は誰かが冗談で作った境界線です。ロサンゼルスとサンフランシスコの間は「NOBODY CARES (誰も気にかけない)」エリアにカテゴライズされています・・・笑
ちなみに、緯度的に半分を分けると、シリコンバレーのサンノゼがほぼ乗っかるので、カリフォルニア住民の精神的な感覚からは適切な分け方ではないでしょう。
「じゃあ、SoCalizationではどこまでを "南カリフォルニア" として扱うの?」と聞こえてきますが、日本でも知られているサンタバーバラよりも少し北の、San Luis Obispo (サンルイスオビスポ) カウンティを含むワイン産地までを、当社の南北境界線としています。
カリフォルニアワイン協会の産地リストでは、「サザン・カリフォルニア」の地域もある中、サンタバーバラとサン・ルイス・オビスポは「セントラルコースト」にカテゴライズされています。この地域を含めた理由には、元々よくここを境にSOCALと考える人が多いことのほか、 気候的にも代表的な南カリフォルニア都市により近いこと、San Luis Obispo の頭文字の "SLO" (スロー) から「ゆっくりとした時間が流れるカリフォルニア SLO-CAL」とサン・ルイス・オビスポの自治体でも観光客に向けてアピールしている点で、SoCalization の普及していきたいライフスタイルにも繋がるからです。
まだSLOカウンティには行ったことはないですが、サンディエゴのレストランで飲んだ、 SLOカウンティはPaso Robles (パソ・ロブレス)の Justin Winery のワインが素晴らしかったので、是非直接行ってみて周辺のワイナリーも探索したいです。
※追記:Justin Winery は2021年10月よりお取り扱い開始
文化の違い
文化の話を深堀りしていきましょう。
上にも書いたように、世界ナンバーワン、テックの聖地シリコンバレーの北カリフォルニアと、エンターテインメントの聖地ハリウッドのある南カリフォルニアという産業的な違いは、その地に集まる人たちの違いも生んでいるようです。
シリコンバレーの北は、誤解を恐れず言えばオタク系、勉強大好き、仕事モーレツ、左脳的なカルチャーがあると思います。アメリカのコメディドラマ『シリコンバレー』を見ていても子供プログラマーが集中力を高める薬、アデラルを服用して夜通しプログラムをガリガリ書く姿がありました。サンノゼに住んでいる私の叔父からもその地域の子供たちは塾に通いスタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校などのトップスクールを目指して勉強するそうです。
一方でハリウッド映画などのエンターテインメント産業が強い南カリフォルニアは、右脳的なカルチャーが強いと思います。コメディドラマ比較で言うと『モダン・ファミリー』が思い浮かびますが、ロサンゼルス郊外に住む家族の物語で、国際結婚、同性結婚など現代的な家族のカタチを取り巻く家族愛コメディで、情緒的、感情的な世界が前面に描写されているかなと思います。USC (南カリフォルニア大学)やUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)などは世界的にも名門校ですが、映像系の学部に強かったり、オタクでガリ勉のイメージは薄く、ワークハード・プレイハードがスマートにできちゃう人たちが多いイメージです。少なくとも私が7年住んでいて「塾に通ってる子供」の話はした記憶がないです。仕事よりも、個人・家族の時間を大事にしているのが南カリフォルニアの文化だと思います。食文化に関しては南北どちらもメキシコ系、アジア系移民の影響を大きく受けているので、大きな差は無いのですが、メキシカンフードはサンフランシスコよりもロサンゼルス、ロサンゼルスよりもサンディエゴと、メキシコに近づけば近づくほど美味しいと言われていますし、私も同意です! これはサンディエゴに来るロサンゼルス民、サンフラン民が口をそろえて "San Diego's Mexican foods are f**king good!" (サンディエゴのメキシカンフードはク〇最高だ!)といいます。
SoCalizationでは現在ワイン事業を行っていますが、南カリフォルニア発祥のフードカルチャーはワイン以外にも輸入していきたいと思っていますのでメキシカンフードにも乞うご期待。
※これら全て個人的見解ですので同意しない人もいると思います!
※追記:ワイン以外のクラフトビールやハードセルツァーも2022年1月より販売開始しました!
番外編:方言
NorCalの人は「Hella 〇〇〇」をとにかく多用します。日本語でいう「めっちゃ〇〇〇」の意味ですが、SoCalの人たちはそれを聞くのをひどく嫌がります 笑
ワイン産地
少し上で、南北の境界線の話でワイン産地に触れましたが、それぞれの地域で有名なワイン産地をまとめたいと思います。
日本でも世界的にも「ナパ・ヴァレー」や「ソノマ・ヴァレー」は知られていますが、南北に長いカリフォルニア、他にもたくさんワイン産地があるんですよ!という事を伝えられたらと思います。
そのためにまず、カリフォルニアワイン協会のサイトをもとにカリフォルニア全体的な数値をまとめます。
一番大きい概念でワイン産地をカテゴライズすると、次の6つの大地域に分けられます。このセクションの下の方に地図画像を載せますのでそこでも確認して見てください。
- Far North California (ファー・ノース=極北カリフォルニア)
- Inland Valleys (インランド・ヴァレーズ)
- North Coast (ノース・コースト)
- Sierra Foothills (シエラ・フットヒルズ)
- Central Coast (セントラル・コースト)
- Southern California (サザン・カリフォルニア)
※地域の北限順
ナパ、ソノマは ノース・コースト に入ります。基本的にソーキャリゼイションで取り扱うのは、セントラルコーストの一部と、サザン・カリフォルニアです。
次に広い概念は「カウンティ=郡」で、州より一つ小さい行政単位です。こちらのリストは長くなってしまうので割愛しますが、31カウンティで作られています。カリフォルニア州全体で58カウンティありますので約半分のカウンティでワイン用にブドウ栽培されていることになります。カリフォルニア各地でワインが作られていることが伺えますね。
なお、カウンティをアペレーション(原産地)としてラベルに載せるには、そのカウンティのブドウを75%以上使用する必要があります。
次に、AVAです。略さずに書くと American Viticultural Areas 、アメリカ政府公認葡萄栽培地域のことで、ワインに使用したブドウの原産地を示すルールにのっとって地域をブランディングする役割にもなっていると思います。
AVAをラベルに表示する場合は、そのAVAからのブドウを85%以上使用する必要があり、かつ州外のブドウは使用不可です。
カリフォルニア全体では、AVAを細分化したサブAVAも含めて、140ものAVAがあります。ソーキャリゼイションの守備範囲としていくAVAはこのうち34で4分の1です。そう考えれば、南カリフォルニアのワインの割合って結構多いですよね!
表にして取扱いAVA範囲を示します。
地理気候的な話をすれば、下の図の通り、サンタバーバラやマリブコーストなどの海岸沿いと、テメキュラの内陸都市は同じ南カリフォルニア地域内でも割と違います。
マリブコーストに関しては、弊社取り扱いの Malibu Rocky Oaks の特集 にて詳しく書きましたのでそちらをお読みください。簡単にまとめると、サンタモニカ山の火山性土壌の山岳部にワイナリーが多く、霧が生まれやすいため、朝夜はしっかり冷えて、昼は豊富な日射量が降り注ぐブドウ栽培に理想的な土地です。
テメキュラは海岸まで35kmほど内陸にあるので、海岸よりもよりドライで降雨量が比較的少なく、日射量はマリブと同じく多いです。
暑すぎるのでは?との心配が聞こえてきますが、夜はしっかり気温が下がり、冬は10℃以下、夏でも15℃くらいまで下がります。昼夜の寒暖差によりワインに適したぶどうが生産されることに繋がります。またウィルソンクリークの畑では、日光が当たり過ぎないように、枝葉で自然な陰をつくる工夫をしているそうです。
なお、テメキュラの土壌は、ミネラル豊富な Decomposing Granite = 花崗岩の(分解された)土壌で、 これは粘土質の土壌と比べて水はけがよく、ブドウ栽培にはとてもいい条件です。ワイン用のブドウ栽培は土地がやせていればいるほどよく、水はけの良さは枝葉より実に養分を与えることを優先するので凝縮した果実のブドウ生産に繋がります。また水の確保で根を深く伸ばすので、地中のミネラルなどを吸収して良い味わいや香りをつくりだします。
ボジョレー・ヌーボーで有名なフランスのボジョレー地方は同じ花崗岩の土壌で、ボジョレー・ヌーヴォーに使われるガメイ品種は、このような土地に適しているそうです。※ただガメイはボジョレー以外でほとんど栽培されておらず、テメキュラでも栽培されていないと思います
他に花崗岩性の土壌に適したブドウ品種は、シュナン・ブラン、リーズリング、シラー、ジンファンデルなどです。テメキュラ観光協会によれば、このほか、イタリア品種のサンジョヴェーゼやモンテプルチアーノ、ヴィオニエ、テンプラニーリョ、ガベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、マルベック、ソーヴィニョン・ブラン、シャルドネなど24種類以上が栽培されています。
なお、SoCalization の名物 アーモンドスパークリングワイン はこの地のシャルドネがベースで作られています。近々、カベルネとジンファンデルのブレンドやもう一つの名物ホワイト・カベルネ・ソーヴィニョンを仕入れる予定です。
※2021年5月より販売開始!
今のところ取り扱っているのは、Temecula Valley と Malibu Coast だけですが、もっともっと範囲を広げて色々な選択肢を提供し、南カリフォルニアのライフスタイルに触れる機会を作っていければと思っていますので今後ともよろしくお願いいたします!
※追記:販売している産地はパソロブレスからサンディエゴまで拡大しました!
それでは今日はこの辺で!
SoCalize & Socialize! ソーキャルして楽しく!
【参考文献】
- 7 differences between Northern and Southern Californians, Matador Network, https://matadornetwork.com/life/7-differences-northern-southern-californians/
- 10 Things South California Does Better Than North California, Movoto, https://www.movoto.com/guide/ca/california-rivalry/
- When People from SoCal Meet People from NorCal, Trevor Wallace, https://www.youtube.com/watch?v=2aF7Z6Edg_Y
- カリフォルニアワイン協会 「生産地一覧」 https://calwines.jp/b2b/wines/origin/
- サン・ルイス・オビスポ観光協会 (Visit San Luis Obispo) https://www.slocal.com/
- テメキュラ観光協会 (Visit Temecula Valley) 「テメキュラワインについて」 https://www.visittemeculavalley.com/wine/about-temecula-wines/
- Rock Solid: Granite Terroir in the Wine World (ワインの世界における花崗岩), Wayne Belding, Wine Review Online http://www.winereviewonline.com/printArticle.cfm?articleID=1512
- A Wine Lover's Guide to Vineyard Soils, Tim Atkins MW https://timatkin.com/cork-talk/a-wine-lovers-guide-to-vineyard-soils/
- 「【ソムリエコラム】ワインの味わいに大きく影響!?ワインと土壌の関係を解説」石関華子 https://www.nomooo.jp/column/114665/